つくる

2026/10/9 06:35

「みんなと同じように頑張れない」と感じたら。AIと活動量チェッカーを作ってみた

「できること」と「無理なくできること」は、同じじゃない。

自分にとって適切な活動量って、どうすれば分かるんだろう? そんな疑問から、AIと一緒に活動量チェッカーを作ってみました。

「どうして自分は、ほかの人と同じようにできないんだろう」

「やりたいことはたくさんあるのに、すぐに疲れてしまう」

「もっと頑張りたいのに、体力や気力がついてこない」

そんなふうに感じたことはありませんか。

世の中には、仕事も家事も育児も、驚くほどのエネルギーでこなしている人がいます。

一方で、同じことをしようとすると、ぐったり疲れてしまう人もいます。

その違いは、単純に努力や意志の強さだけで説明できるものなのでしょうか。

最近、そんなことを考える機会がありました。

そして、ふと思ったのです。

自分にとっての「頑張りすぎ」は、どこからなのだろう?

それを知るための道具があったらいいのではないかと思い、

AIと一緒に「活動量チェッカー」を作ってみることにしました。

「できる」と「無理なくできる」は違う

今回のきっかけの一つは、SNSで見かけた、

ある親子に対するさまざまな意見でした。

子育てや学校生活に関する投稿に対して、「もっとこうした方がいい」「これくらいはできるようになるべきだ」という意見が寄せられていました。

その中には、参考になる意見もあれば、事情を十分に知らないまま、厳しい言葉を投げかけているように感じるものもありました。

もちろん、外から見ているだけでは、その家庭にとって何が正解なのかは分かりません。

ただ、一連のやり取りを見ていて、気になったことがあります。

それは、人によって、同じことをするために必要なエネルギーが違うのではないかということです。

例えば、ある人にとっては簡単にできることでも、別の人にとっては相当な努力が必要かもしれません。

しかも、頑張ればできるからといって、無理なく続けられるとは限りません。

私は、誰かに対して「努力すればできるはずだ」と厳しい言葉をかけている人を見ると、その人自身も、きっと自分に厳しく努力を重ねてきたのだろうと思うことがあります。

でも、その人が努力してできるようになったことを、ほかの人も同じようにできるとは限らない。

正直なところ、精神的にも肉体的にも「ゴリゴリマッチョ」な人が言う情熱的なメッセージに対して、「全員が全員、あなたと同じようにできると思わないでほしい」と感じることもあります。

もちろん、これは私自身も気をつけなければいけないことです。

持って生まれた能力や、これまでの努力で培ってきたものによって、今の自分が当たり前にできること。それを「しんどさを抱えている誰か」にとっても、当たり前にできること、すべきことだと思っていないだろうか。

自分がそれほど負担を感じないことを、誰かも同じようにできるはずだと思っていないだろうか。

「できるか、できないか」。

私たちはつい、その二択で考えてしまいがちですが、その間には大きな幅があるように思います。

いきなり42.195kmを走れと言われたら?

例えば、運動経験がほとんどない人に、突然「フルマラソンを走ってきてください」と言ったらどうでしょうか。

おそらく、多くの人が「それは無理だ」と思うはずです。

走れるようになりたいなら、まずは歩くところから始めたり、短い距離を走ったりしながら、少しずつ体力をつけていくでしょう。

ところが、日常生活や学校、仕事の場面では、これと似たようなことが起こっているのではないかと思うのです。

ほかの人にとっては普通にできることが、ある人にとってはフルマラソンに匹敵するほどの負担になっているかもしれない。

それでも、外からはその負担が見えません。

結果だけを見れば「できている」ように見えても、本人はすべてのエネルギーを使い切っている可能性があります。

反対に、今はできないことでも、負荷を調整しながら取り組めば、少しずつできるようになることもあるでしょう。

もちろん、努力や練習ですべてが解決するわけではありません。環境を変えたり、別の方法を選んだりすることが必要な場合もあります。

大切なのは、今の自分にとって何がどのくらい負担なのかを知ることではないでしょうか。

子どもの活動量を記録する仕組みを、大人にも使えないだろうか

実は先日、疲れやすさのある小学生の息子のために、活動量を記録するスプレッドシートを作りました。

学校、宿題、遊び、外出など、その日に行った活動を入力すると、あらかじめ設定した活動強度の合計が出る仕組みです。

さらに、本人が感じる体力の残量も記録して、活動量と疲労感の関係を見られるようにしています。

目的は、活動量を減らすことでも、たくさん活動できた日を評価することでもありません。

どのくらい活動すると、どのくらい疲れるのか。

その傾向を知ることです。

そして今回、ふと思いました。

「これ、大人にも使えるんじゃない?」

疲れやすさに悩んでいるのは、子どもだけではありません。

仕事、家事、育児、勉強、人付き合い。

大人になれば、自分で活動量を調整できる場面も増えますが、その分、自分で判断しなければならないことも増えます。

自分の限界が分からないまま、つい予定を詰め込んだり、頑張りすぎたりすることもあります。

だったら、まずは自分自身の生活を記録するところから始めてみようと思いました。

Claudeに1日の生活を話して、Excelを作ってもらった

今回使ったのは、AnthropicのAI「Claude」です。

まず、子ども用に作ったExcelファイルを渡し、「これの大人版を作りたい」と伝えました。

そのうえで、普段の生活について、音声入力で思いつくまま話していきました。

子どもの朝の準備、掃除や洗濯、仕事、買い物、運動、子どもの勉強や遊びの相手、夕食づくりなど。

同じ活動でも日によって時間や負担が違うことも伝えました。

Claudeは、これらを活動項目として整理し、活動の有無や時間、強度を選択するだけで記録できるExcelを作ってくれました。

最初に出来上がったものは、細かな調整こそ必要でしたが、ほぼそのまま入力を始められる状態。

自分で一から作ることを考えると、かなりの時間短縮になったと思います。

活動の「負荷」は、どうやって数値化する?

実際に使おうとして悩んだのが、活動ごとの点数の設定です。

最初にClaudeが仮設定した数値では、午前中の活動を入力しただけで合計が135点ほどになっていました。

そもそも、この135点は高いのか、低いのか。

そこで、客観的な指標はないかと調べてみたところ、METs(メッツ)という単位がありました。

METsは、安静時と比較した身体活動の強さを表す指標です。運動だけでなく、料理や掃除、洗濯などの家事にも目安が公開されています。

ただ、METsで分かるのは身体活動の強さであって、頭や心にかかる負荷ではありません。

例えば、デスクワークは身体活動としては低強度でも、複雑な判断をしたり、長時間集中したりすると、かなり疲れることがあります。

一方、ホットヨガのように、身体に負荷がかかっても、気分がすっきりする活動もあります。

単純に身体活動量だけを数値化しても、自分が知りたいこととは少し違う。

そこで、AIと相談しながら、負荷を次の2種類に分けることにしました。

  • 頭・心の負荷: 集中、判断、気遣い、緊張などによる負荷

  • 身体の負荷: 身体を動かすことや、姿勢の維持などによる負荷

この2つを別々に記録し、日々の体力残量と比較する仕組みです。

結局、自分の感覚で0〜5点をつけることにした

最初は、METsや活動時間を使って、できるだけ数値を自動計算しようとしました。

でも、だんだん複雑になってきました。

時間あたりの負荷を設定して、活動時間を掛けて、さらに換算係数を設定して……。

気づけば、負荷を把握するためのツールを作っているのに、その点数が適切かどうかを考えること自体が、結構な負荷になっていたのです。

これは本末転倒かもしれません。

そこで、いったん仕組みをシンプルにすることにしました。

各活動について、「頭・心の負荷」と「身体の負荷」をそれぞれ0〜5点で自己評価します。

点数

負荷の目安

0

ほぼ負荷なし

1

軽い負荷

2

多少の負荷

3

明確な負荷

4

強い負荷

5

非常に強い負荷

例えば、デスクワーク1時間と4時間では、同じ仕事でも負荷の点数を変えます。

運動や家事も、時間や内容に応じて選択肢を分けています。

各活動の点数は設定シートで自由に変更できるので、まずは自分の感覚で設定し、使いながら見直していくことにしました。

METsや想定時間の情報も、点数を考えるときの参考として残しています。

この点数は、医学的に疲労を測定するものではありません。

あくまで、自分にとっての活動負荷を整理するための独自の目安です。

自分にとっての適切な活動量を知るために

今回の活動量チェッカーでは、頭・心と身体の負荷に加えて、夜と翌朝の体力残量も記録できるようにしました。

どんな活動をした日に疲れが残りやすいのか。まずは1週間ほど記録して、自分なりの傾向を探ってみようと思います。

もちろん、疲労には睡眠や体調など、さまざまな要因が関係します。今回の記録だけで何かが分かるとは限りませんが、自分の生活を振り返る材料にはなりそうです。

私が大切だと思うのは、自分の限界を知ることと、自分の可能性を諦めることは違うということ。

今の自分に合った負荷を知ることで、少しずつ活動できる範囲を広げたり、環境や取り組み方を変えたりすることもできるはずです。

こうした視点は、不登校や大人のひきこもりなど、社会的な課題について考える際にも、何かしらのヒントになるのではないかと思っています。

「できるか、できないか」だけではなく、「どのくらいの負荷ならできるのか」「どうすれば無理なく続けられるのか」。

今回作ったチェッカーがどれくらい役立つかは、まだ分かりません。

まずは自分自身で試してみたいと思います。

©︎2026 Nakagami Miho